耳が聞こえにくくなった時は、まず耳鼻科を受診してください

 耳垢があっただけで聞こえなくなっていた、中耳炎になっていたなど、治療でなおる難聴もありますので、まずは耳鼻科医の診察をうけてください。


 お耳の中を診察した後、聴力検査をおこなって補聴器が患者様に必要かどうか相談いたします。よく患者様から、「どのくらいの聴力になったら補聴器になるのですか?」「まだ聞こえるから補聴器はもう少しあとでもいいですか?」などと聞かれることがあります。ただ、補聴器が必要かそうでないかは聴力だけでは決まりません。患者様の生活スタイルによって大きく違います。


 現役で働いていらっしゃる方は、お仕事に支障がでるといけないので、軽度の難聴でも補聴器が必要です。お若い方でも就職試験などでよく聞こえないと困る場合では、早めに補聴器を装着する方もいらっしゃいます。いっぽう一人暮らしでお仕事をされていない方は、聞こえなくてもあまり生活に支障ないといわれる方もいらっしゃいます。


 しかし、聞こえにくくなったために、お稽古事や集会に参加したり、お友達と会ったりすることが億劫になって、家に引きこもってしまう方もいらっしゃいます。最近では、難聴と認知症との関連も報告されております。補聴器をうまく使って、いつまでも生活を楽しんでください。

補聴器にはどんなイメージがありますか

「補聴器は雑音ばかりが大きくきこえて、言葉がはっきりしない」

「補聴器をつけると老人のようだから、もう少ししてからにしたい」

「補聴器をつけると音が響きすぎて、うっとうしい」

「補聴器をいれると耳がつまった感じになる」

「補聴器はすぐにピーピー鳴って困る」

「高いものを買わされそうで心配」

「補聴器を使ってみたいけど、効果がわからないのに買うのはちょっと・・・」

 当院では医師と言語聴覚士が補聴器業者(認定補聴器技能者)との間に入るようにしています。貸し出しを行っておりますので、まずは試聴してみてください。補聴器外来では購入をことわってもかまいません。通常我々は、テレビや冷蔵庫などの家電を買う時でも、よく調べてお店でいろいろ比較して購入します。補聴器は自分の体の一部となるような大切なものですので、ぜひためしていただいて納得がいくまでご相談ください。

自分に合った補聴器の調整をして、脳をトレーニングしましょう

脳を補聴器の音に慣らす

 補聴器は着けてすぐには言葉が聞こえるようになりません。その人の聞こえの状態に合わせた調整と、自分の脳を変える練習が必要です。

1)音が聞こえる仕組みと難聴
 音は、耳の中で電気信号に変わり、それが脳に伝わることではじめて音として感じることができます。つまり、難聴とは、耳の機能が低下することで脳に伝わる電気信号が減少している状態です。正常な聞こえであれば、脳は音の刺激で常に活性化しています。しかし、長い間難聴を放置した場合、耳の機能低下が少しずつ進行し、自分では気が付かないうちに脳が音の刺激が少ない状態に慣れてしまっています。

 2)脳を変える練習
 音の刺激が少ない状態に慣れてしまった脳では、聞き取りに必要な音量を補聴器で伝えると、【うるさい音】、【余計な音】と感じます。この状態では、補聴器を使っても雑音ばかりに目が向いてしまい十分に使いこなせません。そのため、補聴器の音に慣れるためのトレーニングが必要です。十分な音量でも聞き続けられる脳に変化させるには、少し弱めの設定から、定期的な調整で徐々に音量を上げていきます。

3)言葉をハッキリ聞こえるようにするためのトレーニング
 難聴になると、音が聞こえにくくなるだけでなく、脳での音の処理能力も低下してしまいます。言葉を理解するためには、脳に送られたことばの音情報をもとに脳の中にある辞書から該当することばを探し出すという処理を行っています。難聴で音情報が入ってこない状態ではその処理が行われなくなってしまい、脳の聴き取り能力も低下してしまいます。当院では、補聴器を使って音を聴き分ける能力や言葉を理解する力を高める練習を行っています。
4)難聴と認知症の関係
 現在、難聴と認知症の関係について様々な研究が行われています。補聴器を使うことで認知症が治ることはありませんが、予防可能な危険因子の一つとして難聴が考えられています。

補聴器は耳鳴りにも効果があります

 耳鳴りがある方にも補聴器をお勧めします。耳鳴りの多くは、内耳の障害によってその周波数に対応する神経が興奮して脳に伝わることによって起こるといわれております。補聴器を使って、音を入れてあげると耳鳴りは改善します。さらに、耳鳴り治療に使われるサウンドジェネレーターのプログラムを搭載している補聴器も扱っております。


 補聴器の形は耳の中に入れるタイプ、耳にかけるタイプ、箱形のものがあります。また、すでに補聴器を持っておられる方で(ただし古い補聴器はできない場合あり)、うまく合わず使っていない、使いづらいという方、また両耳装用してみたいという方のご相談も受け付けております。