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声のかすれは、なぜ起こるのですか?

声帯ポリープ

声帯に炎症を起こしている時に、声を濫用することで、声帯に出血がおこって血腫として発生し、それがポリープになると考えられています。
初期の小さなポリープは、処置や投薬によって治ることがあります。しかし多くの場合は、手術でポリープをとることが必要です。

左から、「右声帯ポリープ(広基性)」「左声帯ポリープ」「右声帯白板症 左声帯嚢胞」の内視鏡画像 左声帯ポリープは初期であるため、声の安静と投薬で治癒しました。
声帯白板症は前癌状態の場合もありますので、組織検査をします。声帯嚢胞は、手術で嗄声が改善します。

声帯結節

声の使い過ぎが原因です。保育士さん、学校の先生、歌手、ダンスのインストラクターなどに生じやすい病気です。ペンダコのように、声帯が振動して左右がぶつかる位置にタコができて、声帯がうまく振動せずに声がかすれます。
手術で結節を切除しても、また声を使いすぎると再発します。声を休めて、再発しないような発声の訓練が必要です。

両側声帯結節 切除した後、発声訓練を行いました。

ポリープ様声帯

慢性の炎症で、喫煙が主な原因です。声帯全体に浮腫がおこりポリープ状になるため、ポリープ様声帯といわれます。大きくなると、空気の通り道が狭くなり、呼吸が苦しくなることもあります。
禁煙することをお勧めします。大きい場合は、手術で声帯を切開して内容物を除去して声帯を整えます。

両側ポリープ様声帯(右>左) 禁煙を指示した後、手術をしました。

声帯炎

風邪によるもの、のどの使い過ぎによるものです。声が嗄れてから早い時期に声を休めて炎症をとる薬物治療を行えば、改善してきます。

喉頭癌

喫煙者の男性に多い、悪性腫瘍です。頸部のリンパ節が腫れる場合もあります。
腫瘍の程度によって治療法が変わり、レーザーで声帯を焼灼、放射線や抗癌剤による治療、喉頭摘出術などの治療があります。

喉頭癌(両側声帯癌) 他院紹介にて放射線治療。

喉頭肉芽腫(こうとうにくげしゅ)

声帯の後方の声帯突起部に生じる炎症性の良性の腫瘤です。発症原因は、全身麻酔手術などで気管内挿管、長く続いた咳や習慣性の咳払いなどによる物理的な刺激、逆流性食道炎によって胃酸の刺激を受けて生じる肉芽腫です。
吸入薬や胃酸を抑える薬を使用します。

右喉頭肉芽腫 内服薬と吸入薬で軽快。

反回神経麻痺

声帯を動かす神経が麻痺する病気です。声帯が完全にしまらなくなるので、息がもれて声がかすれたり、食事のときにむせたりします。反回神経は脳をでたあと頸や縦隔を通るため、その経路のどこに障害が起きても麻痺が発生する可能性があります。
まずは原因を調べることが大切です。甲状腺癌や食道癌、肺癌などによっても麻痺がおこるため、CTなどによる原因検索が重要です。嗄声や誤嚥などの症状がひどい場合には、声帯内にコラーゲンやシリコンなどを注入する手術や喉頭を形成する手術があります。

左反回神経麻痺 左声帯にコラーゲンを注入しました。

手術が必要になった場合

喉頭微細手術(ラリンゴマイクロサージェリー)

入院して(最短1泊2日)喉頭微細手術(ラリンゴマイクロ手術)を行います。喉頭直達鏡を口腔から喉頭に挿入して顕微鏡で観察しながら喉頭病変を切除します。悪性か良性かを調べるため、採取した組織の検査を行います。その結果悪性の場合は、放射線治療や抗がん剤による治療が必要となりますので、大学病院などの治療可能な施設をご紹介いたします。

声帯結節をはじめとする良性疾患では、治療および再発防止のため発声訓練が重要です。声帯に負担のかかる発声をしないように、言語聴覚士による訓練を行っております。

嗄声が長引く場合には、喉頭癌やその他の悪性腫瘍の可能性もありますので、声の調子がおかしいと感じた時には、早めに耳鼻いんこう科を受診してください。