この項目のトップへ戻る

Bスポット療法(上咽頭擦過療法)

Bスポット療法

「Bスポット」とは、鼻の奥の突き当り(鼻と喉の間)にあたる上咽頭を指します。上咽頭は、鼻咽腔(びいんくう)とも呼ばれ、この鼻咽腔の頭文字の「B」をとって命名されました。上咽頭は、呼吸の際に空気の通り道になるので、細菌、ウイルスやほこりなどが付着しやすく、炎症を起こしやすい部位です。上咽頭炎を起こした場合、抗生物質などを含む内服治療は、一時的に有効ですが、改善しない場合も少なくありません。これに対し、塩化亜鉛というお薬を上咽頭に塗るという治療が有効とされています。これがBスポット療法です。上咽頭擦過療法(EAT)とも言います。50年以上前から行われていた治療法ですが、上咽頭炎の他さまざまな疾患にも効果があることから、近年になり再度注目されるようになりました

方法

まず初回は、内視鏡にて上咽頭を観察し、炎症所見を確認します。その後は、軽く鼻からスプレーの麻酔をした後、1%塩化亜鉛液を染み込ませた綿棒を両方の鼻から挿入して、Bスポットの炎症部位を擦過して塗布します。その後、口からも鼻の奥のBスポットに向かって、咽頭捲綿子という曲がった綿棒に薬剤をつけて塗ります。頻度と回数は各々の患者さんで異なりますが、週に1~2回が通院のペースとなります。症状が改善するまで行い、徐々に回数を減らしていきます。15回くらいを目安にしております。治療は、内服、吸入などの治療と合わせて行う場合も多いです。

効果

鼻と喉の間の不快感や痛み、後鼻漏などの上咽頭炎の症状がよくなります。
上咽頭の表面を覆う繊毛上皮細胞の間には多数のリンパ球が入り込んでおり、上咽頭そのものが免疫器官としての役割を担っております。また上咽頭近傍に自律神経が集中しております。そのため、掌蹠膿疱症、IgA腎症、音声障害、風邪、口内炎、嗅覚障害、味覚障害、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、めまい、頭重感、肩こり、偏頭痛、顔の痛み、自律神経失調症、うつ状態、低血圧、神経症、リウマチ、膠原病といった、免疫力の低下や自律神経失調などにかかわる、多岐にわたる疾患や症状に効果があると報告されております。
ただし、Bスポット療法による諸症状改善のメカニズムは明確に証明されたものではありません。本来の治療を補助するという位置づけで行っております。
まとめると、Bスポット療法に効果的と考えられている症状は、以下のものです。
① 慢性上咽頭炎そのもの、あるいは炎症の放散による症状
② 自律神経系の乱れを介した症状
③ 免疫機序を介した二次疾患

注意点

上咽頭の炎症が強い方ほど、ひりひりとした痛みが出ます。痛みは長くて半日ほど続く場合もありますが、痛みが強いほうが、その後の症状が改善する傾向にありますので、痛いからといって治療を中断しないようにしましょう。Bスポット療法の実施後、血の混じった鼻水・痰がでることがあります。この出血も上咽頭の炎症が強い方ほどある傾向にあります。上咽頭の炎症が治まっていくにつれて、処置後の痛みや出血は改善していきます。
薬を塗った後、鼻水や痰が数時間程度続くことがありますが、これは上咽頭の粘膜が薬で刺激を受けたためにおこるので心配はありません。