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学院長あいさつ

かつて、医療は生命を救うことに焦点が当てられていました。回復が見込めない重症患者にも、とにかく生命を維持するために身体中にチューブやセンサーを取り付け、ベッドで身動きすらままならない、スパゲッティ症候群という悲しい言葉も存在します。そんななかで、歯科疾患は「生命を脅かすことはない」と軽視されても来ました。しかし近年、歯周病と全身疾患(心疾患、糖尿病、肺炎など)との関係が明らかとなり、口腔の健康が全身の健康に深く関わっていることが分かってきたため、歯科医療の役割が改めて見直されています。

また、「高齢社会」から「超高齢社会」を迎える現代においては、医療のトレンドは大きく変わりました。たとえば、高齢者の多くは「せっかく長寿が得られたのだから、寿命が尽きるその日まで人生を楽しみたい」と考えています。つまり「QOL(生活の質)の維持向上」に役立つような医療が求められているのです。「患者の苦痛を無視した延命治療」などは、その実態が明らかになるにつれて嫌われてしまいました。

食べる楽しみ、会話の楽しみ、容貌の維持といった口腔機能が、QOLを支える重要な柱であることが、今でははっきり認識されています。歯や口の健康を守るため口腔ケア、具体的には定期的な口腔診査と保健指導、必要に応じた予防処置や早期治療の重要性も、徐々にではありますが理解、実践されるようになってきました。高齢者の最大死因である肺炎が、施設などでの口腔ケアの励行によって予防できることには、数多くのエビデンスが報告されています。

日常的な歯科医療が歯科医師と歯科衛生士を中核としたチームワークによって成立するものであることは言うまでもありませんが、こうした口腔ケアを担う主役となると、歯科医師よりもむしろ歯科衛生士です。しかも、歯科衛生士の活動の場は、歯科医院のチェアサイドだけではなく、病院の入院病棟、高齢者や障がい者などのための施設、各種の学校や保育所、在宅療養中の患者宅など全国に広がりつつあります。それが現代社会からの要請なのです。

こうした期待に応えることができる能力を備えた歯科衛生士となれるように、本学院は大学付属ならではの教育体制を整えています。高い目標をめざしてがんばりましょう。