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地域連携歯科学講座

沿革

障害者歯科学講座は1982年4月に、日本大学松戸歯学部に続くわが国では2番目の専門講座として開設された。初代主任教授の笠原 浩は、それまでは小児歯科学講座のなかで、重度障害者に対する全身麻酔下集中歯科治療や施設巡回診療など、積極的な取り組みを長年にわたって続けていた。1980年から始まった国際障害者年キャンペーンなどによって障害者の医療・福祉への関心が高まり、長野県の地域医療計画のなかで松本歯科大学病院が基幹病院として位置付けられた。本学開学をめぐってのいくつかの問題からそれまで疎遠であった県当局や県歯科医師会から、吉村知事や県歯会長が初めて大学を訪れ、障害者歯科医療の充実について直接に協力を要請したことも、臨床講座増設のモメントとなったのかも知れない。歯科医師会から委託を受けた「障害者歯科治療実技研修会」もスタートし、現在まで毎年開催されて、すでに200名を超える「障害者歯科相談医」を生み出している。

講座開設の翌春には病院1階に「特殊診療科」として専用診療室がオープンした。渡辺達夫助教授が着任し、本学卒業生の助手10名が勢ぞろいした。県内全域ばかりか、遠方からも多数の患者が来院し、週2回の全身麻酔下集中歯科治療、毎週の施設巡回診療などの診療活動が行われた。多数の症例についての臨床研究が精力的に取り組まれ、学生教育でも歯学部第5学年での講義、臨床実習などが体系的に組織された。この秋には日本障害者歯科医療研究会(現・日本障害者歯科学会)の総会・学術大会も主催した。

このような活動の成果は、毎年数多くの演題となって日本障害者歯科学会をはじめ、老年歯科、小児歯科、歯科麻酔、有病者歯科などの関連学会で発表された。隔年に開催される国際障害者歯科学会(IADH)にも毎回演題を出している。また、教室員による著書や学術論文も数多い。ちなみに1998~2002の最近5年間の業績数を示せば、著書8、学術論文45、学会発表114であり、この間に現・元教室員6名が学位を取得している。笠原が1999年から足かけ3年にわたってロンドン大学イーストマン歯科医学研究所に出向していたことや、2000年7月に渡辺達夫教授が長期療養の甲斐なく死去するという不幸があったにもかかわらずこれらの業績である。

教室発足以来20年余を経過するなかで、診療や臨床研究の主たる対象が当初の「障害児」から「ねたきり老人」に代表されるような有病高齢者へと少しずつ変化してきている。これはわが国の人口の高齢化や在宅療養の普及を反映しているものと思われる。高齢者のQOLと口腔健康との関連性の追求や、ハイリスク患者への安全でより快適な歯科治療の提供など、これからの課題が山積している。

教室の沿革についてくわしくは10周年記念誌「Trace, Trail and Track」および20周年記念誌「『幼年期』を超えて」を参照されたい。

2018年より組織改変にともない「障がい者歯科学講座」は、障がい者歯科学・高齢者歯科学・摂食機能療法学を教える「地域連携歯科学講座」に名称変更された。
この組織改変にともない、地域の他の医療機関等との連携の重要性にクローズアップした講義で、本学学生の卒後の進路に新たな道標を示すことになるだろう。

スタッフ紹介

教 授:蓜島 弘之
講 師:望月 慎恭
助 手:秋枝 俊江
助 手:朝比奈 伯明
助 手:朝比奈 滉直
助 手:田村 瞬至
助 手:村上 康彦
助 手:山上 裕介