本学の建学の理念に掲げる「近代的民主主義」は、他人の個性と意思を尊重し、自らの主張に照らして合意を形成することであり、不断の努力と他者との協力が重要になります。

 大学に対する社会からの求めとして「大学のグローバル化」がありますが、これは国際的な産業競争力の向上や国と国との絆の強化を基盤として、グローバルな舞台に挑戦し活躍できる人材等の養成であります。それにはいろいろな人種の言語、風習および価値観に基づく文化を理解する、そうした能力を豊かにすることが必要になります。本学はその適応の一環として、外国人留学生を積極的に受け入れ、日本人学生と留学生が協調しながら切磋琢磨する環境の下、高度専門職業人を育成しています。またグローバル人材育成センターを新設し、臨床実習、短期交流、研究交流等の各プログラムにおいて、海外の大学および医療機関と交流を深めていく予定です。

 地元の塩尻市とは2014年に、「包括連携協定」を締結しました。文化、産業、医療、教育、学術等の分野で相互に協力し、さらに絆を深め、地域を志向する大学として社会貢献していく所存です。学生諸君も授業やボランティア活動などを通して地域の方々とふれあう機会が多く、大学全体で「口の健康維持でめざす地域の健康寿命延伸」をテーマに広く社会に啓発活動を進めて行きます。

 学術研究活動においては、大学院や総合歯科医学研究所を中心に研究業績を伸ばし、世界の歯科医学界をリードする高水準の研究が次々に生み出されています。国内の競争的研究補助金の採択率は最上部ランクを保っています。

 2008年には新しい大学病院が開院しました。内科、眼科、小児科を加え歯科・医科が連携をはかりながら、地域の中核的な医療機関のひとつとしての位置づけを確固たるものとし、臨床教育の場としても成果をあげています。

 歯科医師国家試験は、歯科医師数が過剰との認識に支配されて、ある種の定員枠のもとに選抜制へと移行して来ており、各大学の歯学部教育はその対応に追われています。幅広い教養を修めることは学生各自の人格形成に大切で、このことは論を待ちません。しかし現状では国家試験に対応できる学習態勢を重視することとなり、教育論においては遺憾に思います。学生諸君は、自己の現状を冷静に認識して、日常生活に計画性をもち、意識的に読書習慣を身に付けることが大切です。礼儀ある態度で、教員に盛んな「問いかけ」をして欲しいと思います。

 「医術は仁術にして算術にあらず」という言葉がありますが、医療人には「やさしさ」、すなわち患者さんに奉仕する気持ちが大切です。本学では知識、技術の修得はもちろんのことですが、人間性をも培い、周りの方々への感謝の心を忘れず、誰からも信頼される歯科医師となるために勉学に励んでください。

 歯科医学の領域は全身の健康とも深くつながっています。高齢者の比率が急速に増える社会にあって、歯科医療は国民の健康長寿延伸のため大いに貢献していかなければなりません。

 学生諸君の将来には、すばらしい医療、研究活動が待ち望まれています。胸を張って大きな夢と希望を持ちましょう。