本学の創立者・矢ヶ﨑 康博士が、かつてこんな話をされたことがあります。「学校というものは入学生ではなく、卒業生の質で評価すべきものだ。たとえば東京大学のように偏差値ではトップレベルの学生が入学しても、卒業生から汚職官僚や強欲な経営者が輩出するようでは『良い学校』とは言えないだろう。まあまあのレベルの学生を受け入れて、それなりの人間に仕上げることができれば『ふつうの学校』、受験地獄の競争に馴染めなくて、偏差値が低いと馬鹿にされていたような子どもたちでも、本来はだれもが持っている無限の可能性を開花させて、すばらしい社会人として巣立たせるような教育ができたとしたら、それこそが本当の『良い学校』じゃないのかね」。

 松本歯科大学は創立からすでに50年余を経過しました。この2月には第46期生が卒業し、累計で約4千7百名の歯科医師、1,400人 を超える歯科衛生士、700人の歯科技工士を社会に送り出しています。それぞれが全国各地で活躍し、地域の歯科医師会役員や地方議会の議員などの要職に就いて地域社会のリーダーとして信頼されている人が少なくはありません。本学の教育の基本に据えられている「歯科医療人である前に良き社会人であれ」という教えは、これからもわが国の地域社会を支える柱のひとつであり続けるでしょう。こうした卒業者諸君の活躍こそが本学のなによりもの誇りなのです。

 本学のキャンパスは自然環境に恵まれています。夏でも白雪がきらめく穂高の峻峰から吹き下ろすさわやかな風のなか、四季の移り変わりにつれてさまざまな花々が目を楽しませてくれます。豊かな自然のなかに世界中のどこの大学にも劣らない充実した施設や設備が整備されていて、最高の学習環境となっています。

 ところで、本学への入学を志願しようとしている諸君に、ぜひとも申し上げておきたいことがあります。それは「みずから学ぶ」という姿勢です。「主導的・積極的な学習態度」を身につけることが肝要です。先生が話すことや書物に記載されている知識を丸呑みにするのではなく、自分の歯で噛み砕いて消化吸収する。そうすることによって初めて自分の血や肉になるのです。

 あらゆることに疑問を持って自分なりに考えてみること、これを「学問する心」と言います。先生方や先輩にどんどん質問してみましょう。そして自分の頭でよく考えてみてください。そうすれば、次の疑問=質問すべきことが見つかるはずです。このような努力を繰り返していくうちに、頭が鍛えられて、本当の知性が身についてきます。

 そこで本学では、新入学生への教育の第一歩としてそうした「学問する心」を育てることに力をいれています。そして、受験地獄のなかでの「勉強はきびしいもの、辛く苦しいもの」といった思い込みから逃れて、「学問することの楽しさ」を見つけ出すことができるように、諸君を支え導いていきます。

 このような学習態度が身につきさえすれば、本学のユニークな教育システムが諸君を優れた学識と技量、そして何よりも大切な人間性をも備えた立派な歯科医療人に育て上げることをお約束できます。