高橋 直之 『硬組織研究ハンドブック』作製に携わって
05.3.28 硬組織疾患制御再建学講座 教授 高橋 直之
2005年3月15日、松本歯科大学出版会から「硬組織研究ハンドブック」(松本歯科大学大学院硬組織研究グループ著)が出版された。この本の出版までのいきさつを、本コラムで紹介したい。
2003年夏、松本歯科大学出版会辰野利彦氏(現在プロジェクト21)から、「骨に関する本を書きませんか?」というお誘いを受けた。それならば、私達自らがほしいと思う本、すなわち硬組織研究に関する重要用語を、図表を用いて解説する用語集、という構想がすぐに浮かんだ。私達は、毎週水曜日と木曜日早朝に抄読会を開いて、硬組織に関する最新論文を学習している。この抄読会に参加している人たちを中心に、大学院生も学習を兼ねて執筆するのがよいのでは、という話になった。
私達がほしいと思う本であるなら、他の硬組織研究者も同じであろう。同様の出版計画が進行してないか気になった。従来の用語集は、「用語」ごとに研究者に原稿を依頼し、それらをまとめて作るものである。著名な研究者が名を連ねるため、そのような用語集の価値と価格は高くなる(一方私たちは、大学院生を含めて執筆しようというものだから、原稿料は受け取らず、出来るだけ本の値段を安くするという方針)。そこで、硬組織に関する用語集を計画しそうな研究者に、その旨を聞いた。多くの研究者は、「そんな本があったら、便利だろうね。」と答えたものの、具体的に計画を進めている人はいなかった。私たちは俄然やる気になり、「硬組織研究ハンドブック」の作製に取り掛かった次第である。
計画から1年半以上かかり、ようやく上梓するに至った。114項目の原稿を執筆することも大変だったが、それらをまとめて読み返すと、いくつかの「用語」で類似した図表が使われているなどの重複や、書き方の不統一が目についた。そのため、最終校正時にも、大幅な直しが出るなど、校正には最後まで苦しんだ。そのような困難があったからなおさらのこと、この本の完成を若い人たちと喜びあえた。
サイエンス論文の執筆はとても楽しい作業である。が、「硬組織研究ハンドブック」の作製を通して、私は本作りの楽しさを学んでしまった。サイエンス論文の作成に必要な内容、構成力、文章力に加えて、本の作製では、デザイン、文字の種類や色、そのインパクト、紙質など総合的なプレゼンテーション能力が問われる。何事も、奥は深いものである。本作りに(も)、当分はまりそうで、ちょっと怖い。
『硬組織研究ハンドブック』
松本歯科大学大学院硬組織研究グループ 著
ISBN4-944171-12-9
B5判 256頁
定価5040円(本体4800円+税)