中村 浩彰  塩尻通信

05.2.8 硬組織疾患制御再建学講座 教授 中村 浩彰

 タイトルに悩んでしまい、宇田川先生の「北アルプス通信」にならって、「塩尻通信」としてみました。松本歯科大学に赴任してから10ヶ月が経とうとしています。高校の修学旅行で上高地に滞在して以来、すっかりリピーターになってしまい、これまでに5回くらいは行っていると思います。ところが、「行こうと思えば、いつでも行ける。」という気持ちでいるのが良くないのでしょうか、こちらに来てからは、まだ一度も訪れていません。
 
 上高地同様、本歯科大学を取り巻くキャンパスは自然環境に恵まれており、このような教育、研究環境にある大学は日本では珍しいのではないかと思います。都会の研究室では、情報過多という欠点もあるかもしれませんが、苦もなく多くの情報が入ってきます。しかし、この自然環境豊かな大学では、自分自身が努力しないと、知らないうちに取り残されるという状況を作ってしまう危険性があります。総合歯科医学研究所では、そのような状況に陥らないよう、Journal ClubやBone Clubといった抄読会、大学院セミナーなどを行い、広い視野を持って研究を進めようという意気込みが感じられます。
 
 研究あるいは基礎研究というと、世間から隔離された環境でじっくりと行われるものをイメージされるかもしれません。私は歯科臨床を選ばずに、基礎系の大学院を選択したわけですが、振り返ってみると、基礎研究室に所属したからこそ経験ができたことが多かったように思います。大学院時代は、同じキャンパス内に医学部と歯学部があったため、医学部の基礎系講座あるいは臨床の大学院生とも常に交流がありました。また、学外の研究会に出席すると、さまざまな分野の第一線の研究者に触れることができ、私とは視点の異なったアイデアに感銘を受けることも多くありました。大学院生としての研究に対する態度は、研究会を通じて他大学の大学院生から学んだような気がします。そのような研究会では、昭和大学の須田先生グループとお会いする機会も多く、本学の高橋先生や宇田川先生とは、研究会を通じて知り合いになることができました。専門的な研究を追求していくからこそ、幅広い視野と知識が必要なのだと思います。このような貴重な機会を若い大学院時代に与えてくださった小澤先生には感謝しております。

 最近、新しい先生と知り合いになりました。大学院時代の友人の奥さんに紹介していただいたヴィオラの先生で、月一回のペースで個人レッスンのため、東京に通っています。大学に入学してからはじめた楽器なのでたいした腕前ではないのですが、誰かに教えていただくというのは良い経験です。思えば、研究や音楽を通して多くの同僚や先輩の先生方にお世話になり、今日の私があるように思います。レッスン帰りの「あずさ」で、次回までに練習しなければならないことを考えつつ、「今年は上高地に行くぞ。」と決意しています。