服部 敏己  あなたの趣味は?

05.6.8 硬組織疾患制御再建学講座 助教授 服部 敏己

 最初に出会った人と話し始めるとき、大抵趣味の話が出て来る。僕は学生時代友人に“Bachを聴いて、Beatlesを歌い、尺八を吹く”という形容詞を付けられ、奇人変人扱いされた。“あいつの頭の中はどうなってんだ?信じられん!”とよく言われた。しかしこれは現在でも事実のことだから、勝手に言わせておくしかない。こっちからすれば、“こんな楽しいものをみんなはどうしてやらないんだろう?”と言いたい。
 
 故山本直純曰く“音楽はBachに始まりBachに終わる”。けだし名言である。聴けば聴くほど、味が出て来る。一度で好きになるものから、一生聴き続けても理解出来ないんじゃないかと思わせるのもある。BGMにもなるし、じっくり聴けば感動で鳥肌が立つ。こんな音楽を放って置く手は無い。簡単な曲は尺八で挑戦したくなる。しかし難しい。
 
 Beatles はリアルタイムで聴いていた。必死にコードを覚え、ギターをかき鳴らして歌った。彼等の曲はクラシック界でも認められていた。故カラヤンも絶賛したほどである。ポップス界で“偉大”という形容詞が付くのは彼等だけであると言われている。彼らの偉業の中で最高のものは若者文化を創始したことであろう。自分達で作った曲を自分達で歌い、演奏したのは彼等が最初である。

 形も音色もヒョウキンで愛嬌のある尺八には高校時代から興味があった。孔がたったの5個という単純な構造にも魅かれた。予備校時代、友人から借りて初めて手にした。学生時代、サークルに入って師匠に正式に教わった。これはなかなか奥が深い。いまだに自分がイメージする音が出て来ない。“一音成仏”という言葉があるが、早くその境地に達したいものである。

 仕事が休みのときは、出来るだけ尺八を吹くことにしている。年齢と共に腕が落ちるのが恐いからである。調子が出て来るのに30分位かかる。時間と共に段々鳴って来るのが快感である。趣味とは快感を与えてくれるものと言えるだろう。あなたは何から快感を得てますか?