(2018.07.01) 荒井敦  偉大なる同級生

(2018.07.01) 硬組織疾患制御再建学講座 講師 荒井 敦

 2018年5月、イチロー選手がマリナーズとスペシャルアシスタントアドバイザー(会長付特別補佐)の契約を結び、選手としては今季の残り試合は出場しないことが報道された。このニュースを耳にして彼が新たなステップを踏み出したことを知り、感慨深いものがあった。私はイチロー選手とは同級生である。しかし、家が近所だとか、学校が一緒だということではなく、単に同年であるというだけで勝手に親近感を持ち、これまで彼の活躍を影ながら応援してきた同い年ファンの一人である。
 長年にわたり一流のメジャーリーガーとして活躍している彼は、日々ベストパフォーマンスを続けるために、大切にしているルーティーンがあることが知られている。有名な話として、試合の日は集合時間の一時間前に球場に来て、決まったストレッチやトレーニングメニューを決まった時間行う。さらに試合が終わるとロッカーでスパイクを磨き、オイルを使ってグローブの手入れをする。次の日を始めるため、次の試合の準備を始めるためにこれらのルーティーンを頑なに守り続ける。細かいことだが卓越性は細かい積み重ねから成り立のだろう。
 彼を想うとき、同年だけれども、あるいは同年だからこそより尊敬の念を抱いてしまう。そんな素晴らしいイチロー選手と何一つ共通点などない私だが、唯一似ているところがあるとすれば、私もルーティーンが好きであるということだ。毎日決まった時間に起き、決まった道を通り大学へ向かう。通勤途中、車内で聞くラジオは、毎朝同じ番組。週末には決まったコースをジョギングする。イチロー選手と同じように、私も仕事を始める準備のため、次の日を始めるため、卓越性を得るためにこれらのルーティーンを頑なに守り続ける。

 いいや、私がこれらのルーティーンを頑なに守り続けたとしても、決して卓越した何かを得られるわけではない。何故だろうと考えた末になんとなく分かったことがある。私は中学卒業後に親元を離れて以来、進学等々で環境の変化を幾度と無く経験してきた。新しい暮らしに馴染むには時間がかかるほうだと思っていた。しかし、最近は短期間で新天地での生活に適応できるようになった。何故かといえば、新しい環境にあった、新しいルーティーンを探すことを覚えたからである。私にとってルーティーンとは安定した日々を過すための細かい積み重ねなのだ。それに対してイチロー選手は次の日の試合に出場するために出来る限りの準備をする、次のヒットを打つその目標のため、チームの状態や周囲に左右されず、日々のルーティーンを大切にする。
そもそも私とはルーティーンに対する心構えが根本から違う。安寧な日々を過すための日課ではない、環境に左右されずに大きな結果を出し続けるための習慣なのだ。そうだ、これを機会に私も、決まった目標に向かい、そして環境に影響を受けずに結果を出せるようなルーティーンを始めよう。

イチロー
さすが我らが同級生、君は偉大だぜ。