(2018.06.01) 小笠原正  プロセス

(2018.06.01) 健康増進口腔科学講座 教授 小笠原正

 だから研究はおもしろいですね。
毎週月曜日の朝8時から講座の先生が集まります。講座の先生全員による研究ミーティングです。そして木曜日の朝8時にも研究チーム毎のミーティングが開催されます。個々のテーマについて段階的に発表し、みんなで気がついたことをディスカッションします。十分な準備を行った後に①研究テーマに関連した過去の報告、②研究の仮説と位置づけ、③研究方法、④調査用紙、⑤パイロット調査結果と修正、⑥中間の調査結果、⑦分析結果、⑧予演会、⑨論文の進行状況に合わせた報告など、段階的に報告して貰います。それぞれの先生が質問に対して適切な説明ができなければ、修正となり、再度の報告になります。一人で研究計画を立案し、調査を進めますと、独りよがりとなり、大きな見落としをしていることがあります。多くの先生の目に触れてもらい、気がついたことを言ってもらいます。そして満を持しての学会発表で自信を持って望んだはずが、鋭い質問に音を上げることもあります。これは、かなり凹みます。しかし、これこそを大事にしなければなりません。日頃のディスカッションや学会発表での意見を踏まえて修正していくことにより良い研究に育ちます。こうしたことを通して日々勉強します。私自身は卒業して35年ですが、日々勉強の毎日です。新たな発見や反省、修正、それによって研究内容が大きく成長します。自分自身も成長します。これがおもしろいですね。
大学院生の人であれば、質問されることを怖がらずに指導教員と議論を闘わせて下さい。私も若い頃は准教授(昔は助教授と言いました)と激しい議論をして、成長させて頂きました。すべてを前向きに捉え、大学院生活を楽しんで下さい。
博士の学位は、「足の裏の米粒」とも言われます。これは、多くの人が取得するものの、生活する上では役に立ちづらいものを揶揄した言葉です。「足の裏の米粒」は「取らないと気持ち悪いが、取っても食えない」ものであり、取得しておいたほうがよい資格だが、その資格を取っただけで飯を食っていくのは難しい、という意味合いで用いられます。頂いた博士の学位は、その通りかもしれませんが、取得するまでのプロセスに価値があるのです。指導教員や他の先生とのディスカッションにより気付いたこと、学んだことは、次の研究や医療の実践、物の見方のための糧になり、必ず皆さんの役に立ちます。一生懸命やれば、やるだけ、得られる物が多くあります。つまりプロセスが大事ということです。どうか大学院の皆さんは、この時期を大いに楽しんで下さい。