(2018.02.01) 荒敏昭  裏稼業

(2018.02.01) 硬組織疾患制御再建学講座 講師 荒敏昭

コラムの内容は自由という事ですので、以前書かれた諸先生と同じように研究活動以外の内容を書かせて頂きます。物騒なタイトルですが、「裏稼業」と言っても「必殺仕事人」(私が大学生の頃まで良く見ていた時代劇のシリーズ)の事ではないため安心して下さい。私の趣味の一つであるコンピュータ関連の内容です。

世の中にはコンピュータが無数に存在していますが、ほとんどがWindowsマシンです。しかし私は自宅ではOSとしてLinux(注1)を使用しています。Linuxディストリビューション(注2)の中でもVine Linuxを常用しており、自宅のコンピュータおよび大学でプレゼンテーションで使用するノートパソコンのすべてにインストールしています。Linuxというと「何それ?」「難しそう」「Windowsでいい」「私Mac派なので」という反応が返って来ます(若干誇張しています)。初めは私も同じ反応でしたが、今ではWindowsよりもLinuxを使用する方が圧倒的に楽に感じています。ちなみに私の子供も学校でWindowsマシンを使用する機会があったのですが「慣れない」と言っていました。

ここから本題に入ります。私は全くのボランティアですが「裏稼業」としてこのVine Linuxの開発に参加しています(とは言っても主要メンバーではなく開発協力メンバーです)。ほとんどの人は「開発って何をするの?」と思うはずなので簡単に私が行っている仕事内容を説明します。仕事内容はパッケージ(注3)の作成およびメンテナンスです。担当しているアプリケーションのバージョンをチェックして、それが上がると必要に応じてパッケージ化をする、という繰り返しです。なので主要メンバーの方々と比較するとそれほど仕事量が多い訳ではありません。私が初めて開発に参加したのは2009年頃であり、最初にパッケージを作成したのが「R」でした(正確には既存のパッケージのバージョンアップ)。それ以前から実験結果の統計解析を行う際にRを使用していたのですが、最新版のRのパッケージを作成する人がいなかったという事もあり、無謀にも自らパッケージ作成に手を挙げたというのが始まりです。

それ以来9年ちょっとですが継続的に開発に参加しており、少しずつではありますが作成したパッケージが増えています。現在はLibreOfficeやImageJのような有名なアプリケーションのパッケージ化も担当しています。特にRについては最新版が公開されたらその日のうちにパッケージ化をするように努力をしています。一体誰とスピードを競っているのだろう……という感じです。また最近は自分自身では使用しないものの他の人が使用すると思われるアプリケーションのパッケージを作成する場合もあります。

このように書くと簡単に思えますが、アプリケーションのバージョンによってはパッケージ作成時にエラーが出る事もあり、その場合には修正するためのコードをネットで探しまくるという作業が待っています(ほとんどが英語のページです……。このコラムの執筆期間中もエラーが出まくているため格闘しています)。ただし、エラーを解決できた時の喜びや、ネットで私が作成したパッケージを使用してくれているとの書込みを見たりした時の喜びが大きいため、開発協力をなかなか辞める訳にはいきません。また、Vine Linuxの開発は敷居が低い事もあり、自分が使用しそうなアプリケーションをパッケージ化する事が容易であるというのも開発を続ける上で利点となっていると思います。このように趣味と実益がマッチしているという点が比較的長続きしている理由かもしれません。

ほとんどが活動紹介になってしまいましたが、このコラムを読んで頂いた方々もLinuxに興味を持って試しにでもLinuxに触れてもらい、ユーザーとなってくれると非常に嬉しいです(でもいませんよね)。また、何事もそうですが、便利に使用できる裏で無償で作業をしてくれる人がいる事を知ってもらえるとありがたいです。

(注1)コンピュータのOSについて。コンピュータのシステムの基盤になるのがオペレーティングシステム(OS)です。ほとんどのコンピュータはマイクロソフト社が開発したWindowsが搭載されており、アップル社のコンピュータにはMac OSが搭載されています。また、これら以外にももっと古くから存在しているOSとしてUNIXがあります(実は現在のMac OSはUNIX系です)。
このUNIXの流れをくむOSの一つがLinuxです。また、サーバ機として使用されているコンピュータはLinuxを使用している事が多いそうです。LinuxはWindowsやMac OSと違い、無償で入手する事ができます。ちなみにスマートフォンで使用されているAndroidはLinuxをベースに作成されたものであるため、ほとんどの人が知らず知らずの間にLinuxを使用している事になります。

(注2)Linuxのインストールを簡単に行うことができるように様々なプログラムを組み合せたものをLinuxディストリビューションと言います。Linuxディストリビューションには様々な種類があり、日本ではUbuntuなどが有名です。私が常用しているVine Linuxは昔は人気がありましたが、残念ながら最近は使用する人がかなり減っているようです。
私がLinuxを使用し始めたのは松本歯科大学に赴任して2-3年経った頃だったと思います。当時の大学院生にLinuxの存在を教えてもらい興味を持ったため、自宅のコンピュータ(当時はWindows2000)に試しにインストールしたところ間違えてWindowsを消してしまった……という所から付き合いが始まっています。今ではWindowsよりも使いやすいと思っているのでなくてはならない存在です。

(注3)パッケージとは「インストールおよびアンインストールが簡単になるようにアプリケーションをソースコードをもとにプログラムにしたもの」程度に考えて下さい。Windowsと異なりアプリケーションのインストールおよびアンインストールが非常に簡単です。