田村 瞬至  研究の道しるべ

(2023.1.27) 健康増進口腔科学講座・口腔健康政策学・2022年社会人大学院修了 田村 瞬至

 大学院を今後進むべき道としたいと考えている人はどれくらいいるものでしょうか。
その目的は専門性の高い知識、技能を身に着けることや、発表を通してプレゼンテーションスキルを養うこと、他大学との交流や将来就職先の選択肢が増える等人それぞれ異なることでしょう。
院生は病院での業務とは別に自身のスケジュールや研究計画を立てる必要があり、自主性や自身をコントロールする力が求められます。多くの時間をかけ資料を読む必要があることから読書の習慣や、海外の論文のための英語力は大学院に入る前から身につけておくべきスキルだと思います。研究を行っていくうえで大まかな流れを知っておくことは長い大学院生活のペース配分を考えていく上で重要ですので紹介できたらと思います。
一年目は毎週夕方に様々な分野の教員による数コマの講義がありました。先生方の研究について実験方法や考え方を説明いただき、研究の倫理や統計について気を付けなくてはならないことを学びました。それまで研究について関わりの無かった私にとってはどうゆうことに気を付けて、どのような形を目指していけばよいのかをイメージしていく機会になりました。
 二年次からはいよいよ研究らしいことを意識し始め、実際に自分で行っていく研究テーマについて決定していきました。二年目の前半にはテーマ発表会があり、具体的にどんな研究の方向性にしていくか、過去の先輩の先行研究や指導教員のアドバイスを参考にしていきました。その後、人の情報を扱う研究であることから倫理審査申請や研究計画書の作成し、研究データの集計を行っていきました。
 三年次は集まった過去三年間のデータについて統計解析や先輩方の発表の様子を毎月見学するようにし、中間発表へ備えていきました。そこで課題や疑問点を審査の先生方よりご意見いただき仕上げていきました。
四年次は学位論文の作成と大学院の先生方を前にした最終発表、学位審査を経てなんとか大学院修了までたどり着くことができました。学位取得までの道のりを完走できたのは、統計について多大な協力をいただいた先生、最後まで見捨てずに向き合ってくださった指導医の先生のご指導の賜物で本当に感謝しています。
大学院に今後進んでみたいと考えている方々に覚えておいてほしいことは少々あります。論文として文章を練っていく際には普段よりもかしこまった言葉で書いていく必要があります。文章を書いていく上で参考文献を二~三十掲載することからも、関連分野の論文を早い時期から閲読しておき文の組み立て方や言葉遣いに慣れていく必要性を感じました。また、指導医の先生とよく連携を行うことが大切だと考えます。研究に携わったことのない人にとって大学院生はある意味プチ転職のようなもので、こういったデータも調べた方が説得力があるだとか、この統計方法が適しているだとか、論文に適した表現等、研究者なら知っていることも常識ではない側面があります。そのため進んでいる方向がおかしくなった時に問題点を指摘して軌道修正してもらえるようこまめに研究の進展状況を報告しておくのが重要だと感じました。
 生涯学習とはよく言ったもので、この四年間また新しい経験をすることができました。皆さんも自分との闘いに打ち勝ちながら学問を究めていく道を大学院で歩んでみてはいかがでしょうか。