教員コラム 「瞑想」

05.3.22 硬組織疾患制御再建学講座 助教授 深澤 加與子

 周知のことであるが、Watsonと Crickによる遺伝子(DNA)の二重らせん構造の発表は、(我々)生命科学研究者に大きな可能性を与え、今日、品種改良、遺伝子治療、医薬品の開発、再生医療など、人類に大いなる貢献をもたらしつつある。多くの科学者が現在も希望に燃え、人類に貢献すべく、研究を続けている。しかし一方、クローンヒツジ、ドリーの誕生で、クローン人間の是非が問われ、将来に大きな問題(危惧)を抱えることになった。
 
 人間のあくなき真理の探究により、人間は他の生物とは比べようのない権力を持つことができたが、同時に人間自身が、他の生物とほとんど差のない存在であることを突きつけられた。これは、一歩まちがえれば、人間自身がロボット化し、見えないものに支配される危険性をはらんでいる(SFの世界が現実感を帯びてきた)。
 
 人体の神秘のベールが剥がされ、人体は分子の集合体で、人間の行動は化学的法則にしたがい遂行されていることが明らかになった。にもかかわらず、地球上の人間の行動は、有史以来ほとんど変わることなく、権力闘争、民族間の戦闘に明け暮れ、信じられないような凶悪な犯罪は止むこと無く増え続けている。本当に科学の発展は人間に、幸と富をもたらすだろうか、人間も生物の一つとして、自然のまま生きることが幸せなのではないだろうか。特に、社会から落ちこぼれていく少年・少女が事件を起こした時、目的をもてない若者が増加しているのを知るにつけ考えさせられる。

 世界を動かすような研究をしたわけではないのだが、真理の探究を目的に日々を過ごす一人として、ぬぐいされない不安となっている。