教員コラム 「北アルプス通信」

硬組織疾患制御再建学講座 教授 宇田川 信之

 心地よく冷えた新鮮な空気の中、朝日に照らされた北アルプスの白く輝く穂高連峰が美しく松本歯科大学のキャンパスから眺められる季節となりました。このたおやかな峰は松本市街からは望めず、松本歯科大学の所在地である塩尻桔梗が原からの眺めが絶景です。

 皆さまお元気ですか。昨年8月に13年ぶりに松本歯科大学に戻ってきました。キャンパスの美しさは感動的です。キャンパス内では4月上旬にはソメイヨシノが、下旬にはヨウキヒやウコンといった八重桜が彩りを添え、新緑が目に眩しい限りです。また、秋の美しい紅葉の季節も有名です。クリスマスシーズンは、大学構内の大きなヒマラヤ杉やモミの木にイルミネーションが飾られ、私達を神秘的な気持ちにさせてくれます。皆さま、是非ご訪問ください。

 現在、松本市両島(南松本周辺)の自宅から奈良井川の堤防道路を使って通勤しています。大変快適です。両島という地は、奈良井川に面した水田を中心とする農業地域だったようです。近年は、住宅地として開発が進み、専業農家もかなり減少したようですが、昔からの伝統行事が多く残っています。1月には"三九郎"とよばれる、正月飾りや達磨を集めた大きな"どんと焼き"(※1)が盛大に行われます。また、私の家の近くには、高さ2メートルにおよぶ大きな草履が木に吊るされています。最初に見た時はぞっとしましたが、この草履は、悪疫を撒き散らす巨人を退散させるために両島町の入り口2箇所に吊るされているものだそうです。毎年新調されるもので、国の民俗文化財にも指定されているものです。千葉県の新興住宅地に生まれ育った自分としては、松本という伝統的な街がとても新鮮に感じられます。

 多くの卒業生の思い出が詰まった実習館2階の基礎実習室のスペースが総合歯科医学研究所に生まれ変わりました。この4月より新しい斬新な設計の実験施設を用いて実験を行っています。今までのスタッフに加えて、全国各地から新しく赴任してくれた多くの優秀な研究者と共に新しい研究チームを結成しつつあります。彼らは良く働きます。早朝から深夜まで休日もなく、研究に没頭しております。それも科学を楽しみながら働いているのです。私達は、松本歯科大学から世界に通用する研究成果を発表でき、これを学部学生の教育に還元できることを夢みております。

 豊かな自然は人間の心を和らげてくれます。自然に恵まれた松本歯科大学は大学院学生の若い力を求めています。是非、研究の世界を一緒に覗いてみましょう。
 
(※1)どんど焼きの由来
 正月の松飾りなどを集めて、小正月を中心に行われる火祭り。どんど焼き。
地方によっては、左義長・どんどん焼き・とんど焼き・三九郎焼き・さいとう等とさまざまな呼び方をします。
 歴史は古く、平安時代の記録にも、正月15日あるいは、18日に火祭りが行われ「三毬杖」「三鞠打」として記され、主に宮中や公家による宮廷行事の一つであったそうです。
 この左義長は、中国後漢の明帝の時代に仏教と道教どちらが優れているか試みるために、両方の教典を左右に置いて焼いたところ、右の道教の経は灰になり、左の仏教の経は燃えなかったという。そこで「左の義長ぜり」との判定で左義長と書く説と、中世にお年玉として贈られた、まり打ち遊び道具「三毬杖」の傷んだものを燃す行事から来た説とさまざまあり、私達が聞きなれた、どんど焼きのどんどは、火の勢いを盛んにする言葉と、神を畏敬する「尊や尊」のはやし言葉が一緒になったものだそうです。
 このどんど焼きの火で、書き初めの紙が高く舞い上がると字が上手くなるとか、この火に体をあてると若返る体が丈夫になります。
 また、この火で焼いた団子や餅を食べると病気をしない、尻をあぶれば長生きをする、残り灰を体にまぶして無病息災のまじないをしたりと、火を神聖視する信仰が結びついて、さまざまな願いがこの火祭りに込められています。
(参考資料:日本民俗辞典 ふるさと祭事記)