大学院生コラム 「道なき未知」

(2010.12.20) 硬組織疾患制御再建学講座・硬組織疾患病態解析学 4年生 村岡 理奈

大学院における私の研究は、歯科矯正臨床の場で実際に生じる生体反応、つまり細胞の反応を観察し、それらの反応が起こる背景や理由、その意味を追求することです。
歯科矯正治療において歯に矯正力をかけると、それを受けた歯周組織が反応し、歯の移動側(圧迫側)には“破骨細胞の出現により骨の吸収”が起こり、その反対側(牽引側)では“骨芽細胞の活性化により骨の添加”が起こります。そしてその結果として“歯の移動”が起こります。日々これらの現象が起こる歯科矯正治療に従事する者として、その生物学的基盤をより理解したうえで治療を行なうためにも、大学院にて歯の移動に伴う細胞変化を観察する機会を得たことは、私にとって貴重な経験となりました。

川上敏行教授(写真左)

現在、私は大学院4年生で硬組織疾患病態解析学の川上敏行教授に御指導していただいております。

振り返ると、大学院へ入学するまでは、基礎と臨床の繋がりをまだ理解していませんでした。基礎研究は難しそう…という漠然としたイメージと、自分にそれが出来るのだろうか?という不安、そして一度やると決めたら最後までやり通す!といった思いがありました。

しかし、実際そんな不安を感じる間は無く、入学後すぐに先輩の研究を見ながらその手技を覚え、学会に参加し、実際に実験を始めて…と、当初あった不安など思い出すことも無く日々は過ぎていきました。

イギリスでの学会発表にて

大学院在学中、私は学会発表の機会を多々与えていただき、これまでに国内学会をはじめ、4年生時にはイギリスにて自身初の国際学会での発表をさせていただきました。

そして学会場では他大学の先生方とも交流する機会に恵まれ、自身の研究についてのアドバイス等もたくさんいただきました。

発表が無事終わるまでは、手に汗をかいてポスターを見つめ、はたまた発表スライドが無事映るようにお祈り?!をして緊張の瞬間を迎えているのですが、発表後はその土地の名物料理や、今までに見た事のない景色に思いをめぐらせてしまう旅好きな自分が居ます。

四国大歩危でのラフティング

そんな私を察してか、川上教授と同講座の中野准教授は、他大学の教授をはじめその講座の先生方と合同でのレクリエーションに何度か誘って下さいました。

その中でも、当初参加を躊躇った四国大歩危でのラフティングは忘れられない思い出です。川上教授に「ただの川下りだから大丈夫だよ。」と言われ、迎えた当日。参加者にはライフジャケットが手渡され、日本一と名高い吉野川の激流をみんなで一緒に下ったことは生涯忘れません。

三徳山三沸寺の投入堂

院生としての最後の夏、まだ残暑厳しい中、我らが川上教授率いる松本歯科大学と、愛知学院大学、岡山大学の先生方と鳥取県の三徳山三沸寺の投入堂までの登山をしてきました。

大きな岩山をよじ登り、深く大地に延びる木の幹をくぐり、やっとの思いで頂上に到達すると、そこには断崖絶壁に建つお堂が静かにその姿を現しました。

平成の今なお、どうやって崖の上(崖の中?!)にこのお堂を作ったのか、まだ解からないそうです。確かに、お堂までの険しい道のりを考えると、容易には見当がつきません。

投入堂しかり、この世の中には、まだまだ解明されていないことがたくさんあると言います。そうやって人は、道なき未知をゆく日々を、生涯送るのでしょうか?

私はそう想いをめぐらせ、これからも行けるところまで行こうと思うのです。

けれど、マイペースな私は、徳川家康公の
“人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。”
との名言を胸に刻んでゆっくり一歩ずつ…